地方参政権

地方参政権について

「私は、世界的視野に立って今後の日本社会の建設を進めていくに当たっては、国内におられるこれらの方々と、同じ社会に生活する人間として共に考え、共に生きることができるようにしなければならないと考えます」。
これは、1991年1月に、在日韓国人三世以降の法的地位や処遇等が、日韓外相覚書というかたちで取り決められた時、当時の海部俊樹総理が特別に日本国民に送ったメッセージです。特に日本国民に、「共存・共生者」としての在日韓国人像を明示したものとして、地方参政権運動を進める上でとても大切なメッセージであると思います。

93年9月には、大阪府の岸和田市が全国で初めて定住外国人への参政権付与を政府に求める決議をしました。また、95年2月には最高裁判決で永住外国人に選挙権を認める初の憲法判断が出ました。
「…永住外国人等に対する地方参政権付与は憲法上禁止されているものではない…もっぱら国の立法政策に関わる事柄である」との判決は、永住外国人の選挙権付与の合憲性を示し、法律の制定を立法府にゆだねているものであります。
これを契機に地方議会における意見書の採択が相次ぎ、2008年現在、全自治体の半数以上が採択しています。
この最高裁判決を受けて、各政党では永住外国人の地方参政権に関して、この間鋭意検討を続けていますが、日本政府や各政党が、最高裁の判決及び地方自治体の意見書を尊重し、国会で一日も早く立法化されるよう私たちは強く要望しております。
すでに戦後63年を経て、私たちは、日本社会の国際化と在日韓国人の長い居住歴と生活実態に照らし、地方自治体の参政権を住民として望み、認知されるべき時期に来ていると考えております。日本国民の意識も高まっており、永住外国人への地方参政権付与はまさしく時代の要請でもあります。

また、私たちはこの運動を通して、日本国民の皆様の期待と信頼にこたえ、地域社会の発展により一層寄与していく決意であります。
地方参政権の早期実現に向け、皆様の深いご理解とご支援をお願い申し上げます。

地方参政権獲得運動とは?

● 驚かれるかもしれませんが、戦後60年以上も経つのに、私たち在日韓国人には地方自治体の参政権がありません。このことが日本の国際化と民主主義の問題として、いまクローズアップされています。

● 私たち在日韓国人は、特殊な歴史的経緯によって日本に住む永住者及びその子孫であり、また住民税、所得税など各種の納税義務を地域の日本人と同等に長年にわたって履行している納税者でもあります。またあらゆる分野で地域社会の発展に応分のコストを負担している住民です。

● 私たちは、地域住民として住んでいる地方公共団体(都道府県・市町村)の参政権を望んでいます。またこの権利の行使を可能にする立法措置が国会においてただちに講じられることを望んでいます。

● 私たちは特別なことを望んでいるのではありません。日本で居住するにいたった長い歴史的経緯と地域社会に根をおろしているその生活実態に照らし、地域住民として不可欠な基本的人権である、地方自治体の参政権を求めているのです。これは半世紀以上にわたる「生活者」としての実績から来ている権益擁護運動なのです。

● 私たちは、日本政府に対し、地方参政権の立法化を求める運動を全国的に展開しております。全国に215万の在日外国人が居住していますが、そのうちの約60万人が、日本における最も古い住民である私たち在日韓国人であります。(2007年末現在)

● 私たちの、「住民」としての地方参政権要望の正当性を日本社会が積極的に理解され、この運動に対する世論の賛同を私たちは願っています。

● 永住外国人に地方参政権を付与することは、日本の憲法精神にかなうものであり、日本の民主主義の成熟に欠くべからざるものです。その意味で、この問題は日本自身の問題でもあるのです。

● 私たちは戦後一貫して、地域社会の発展のためにその責任と義務を果たし、信頼関係を深め、名実ともに共生する社会の具現をめざして、多様な分野で寄与してきました。私たちは、住民としての基本的権利である地方参政権の確立を、私たちの総意をもって、国民の皆様に強く要望するものです。

住民として、また良き隣人として

● 1995年2月の最高裁判決は、「外国人のうちでも永住者等に、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、選挙権を付与する措置を講ずることは憲法上禁止されているものではない」というものでした。地方レベルの参政権には、国籍が不可欠の要件ではなく、外国籍でも永住する住民であれば、憲法上問題がないことを明示した画期的な判決です。

● これは日本政府が今まで言ってきた、日本国籍でないものには参政権は与えられないという、いわゆる「国籍」の論理とは別に、私たちが主張してきた「住民」の論理、地域社会に根をおろしている生活者の論理が認められたのです。

● 住民としての私たちの運動の正当性を立証した最高裁判所の判決は、大きな意義があります。これによって国籍に関する違憲問題が解消され、国会での立法化措置が待たれるだけとなったのです。いま、日本政府の政策の転換がつよく求められているのです。

広がる地方自治体 議会の意見書採択!

● 1993年9月、大阪の岸和田市が全国で初めて「定住外国人の地方参政権など、人権保障の確立を政府に求める意見書」を採択、これを契機に本団の要望活動が活発化し、95年の最高裁の容認判決もあって、現在、全国自治体での意見書採択は、962議会にのぼっています。(2008年1月現在)

● この意見書採択率は、全国1,865自治体の51.58%にあたります。この採択数は、民主主義のルールからいけば、すぐにでも国会でしかるべく論議し、正当に立法化措置を講ずるべきではないでしょうか。

日本国民の総意として

● 永住外国人に対する地方参政権が、日本国民の総意として確立されることを、私たちは望んでいます。これは、日本の民主主義を成熟させ、また何よりも人権保障における日本の世界的役割と国際化を実現し、アジアとの信頼関係の真の構築に寄与するものであります。

● 永住外国人に地方参政権を付与することに対し、一部の国民の間で慎重論が出ていますが、法的にはすでに最高裁において違憲ではないことが明示されております。一部の慎重論は感情的で排他的なものであります。永住外国人を、同等の基本的人権を有する住民として正当に受け入れ、相互理解をはかることが、先進国である日本の果たすべき役割であり、また日本の将来の国益に利するものと考えます。

● 私たちの一部においても反対論があるではないかという意見もありますが、これはごく一部のものであります。私たちは約60万人居住していますが、このうち在日韓国籍住民は約50万を占めており、それ以外の一般の朝鮮籍の者たちも多くが地方参政権を求めています。

● ちなみに以前、日本選挙学会が行った在日韓国・朝鮮人に対するアンケート調査では、80%以上が地方参政権は「認められるべき」としています。また日本の全国有権者を対象としたマスコミの世論調査でも過半数以上が地方参政権を「認めるべき」としています。

● この間、私たちの歴史性、定住性に配慮した明確な基本的人権を保障してこなかった、日本政府の政策は、今や転換する時期にきていると思われます。国籍や民族の違いを認め、一定の義務と資格を有する私たち住民に、日本国民の総意として、地方参政権が付与されることを、私たちは望んでいます。良き隣人としてのしかるべき配慮が願われているのです。

共生社会実現のために立法化措置を

● 21世紀の、日本に課せられた大きなテーマの一つが内実のある「国際化」の実現でありま す。年間1千万人以上の日本人が海外に出ています。その内、韓国へは223万人が訪韓しており、韓国からも260万人が訪日しています。(2007年)

● 今、日本には「内なる国際化」の定着として、行政の側からの外国籍住民へのサービスと、地域社会をともに良くしていくための、地方自治への参与の具体化が問われています。互いに国籍と民族性を尊重し、いわゆる「共生」社会の具現化が求められています。

● このことに自治体の多くが賛同し、永住外国人の地方参政権を確立する意見書として政府に上がっており、あとは国会での立法化が残っているだけです。この問題をこれ以上先送りせず、政府や国会議員が一日も早く立法措置を取ることを願っています。

● 各政党や、社会団体においても、「地方自治に参画する権利は、その地域で生活を行っていくために必須の条件である」「定住外国人が、住所を有する自治体の政治・行政に参加できないのは不合理であり、当該自治体の政治・行政によってその生活に影響を及ぼすわけであるから、地方参政権を認めるべきである」と、見解を述べています。

●国政は国民が、地方自治は住民がその義務と責任と権利を有するべきという考えがヨーロッパでは主流となっています。北欧諸国では約1万人の日本国籍者が、地域住民として地方参政権を行使しています。

●現在、25カ国で定住外国人に地方参政権を付与していますが、帰化を強制されることはありません。アジアでは日本と同じような地方自治を行っている国は、韓国しかありません。韓国では2006年5月の統一地方選挙から、永住外国籍住民が地方選挙権を行使しています。

●一部の国会議員が反対の理由にしている「相互主義原則」が仮に正しいとしても、日本は韓国を含む二十数ヶ国の日本に定住する外国籍住民には地方参政権を付与しなければ理屈が合わないのではないでしょうか?

共生社会を実現しよう!

● 私たちは、日本に住む最も古い外国籍住民であります。私たちの目的はこの運動を通じて、相互理解と信頼関係を確立し、私たちの住民権・市民権が保障されることです。と同時にこの運動を通じて、人権意識を高め、国籍や民族性の違いを互いに認め尊重する社会をつくっていくことです。そのような意味で、「共生」の理念の実現が今後ますます私たちに求められているのです。

● 私たちの住民としての正当な権利要求を、今後とも日本社会の理解と賛同を得ながら、ねばり強くやっていきたいと思います。またこのことは、日本で永住する3・4世の次代の者たちが日本の次代の友人たちと、「共生」し、より安定した生活を営んでいくための確かな基盤ともなるのです。

● 1995年の阪神大震災の時、救援活動に真っ先に立ち上がったのが私たち在日の2・3世でした。同じ「住民」として、国籍を越え、救援活動の先頭に立ったのです。

● 名実ともに共生・共存する地域社会の具現と、日本社会の発展と国際化、またアジアの平和と安全のためにも、私たちに地方参政権が付与されるよう、ともに立法化のためにご参与ください。日本国民の皆様のご理解とご支援を切にお願いします。

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